【コラム】昔は保育園で用意されていた布団と主食 なぜ今は保護者負担に?──行政サービスの「後退」を考える

私の親世代に聞くと、かつての保育園では布団も主食(ごはんやパンなど)も保育園側が用意してくれていたそうです。保護者が毎朝持参したり、週末に布団を持ち帰って洗濯したりする必要はなく、忙しい朝の時間を子どもと落ち着いて過ごすことができたといいます。

しかし、私たちの子育て世代になると、話は違ってきます。現在、多くの保育施設では布団や主食の持参が保護者に求められており、共働き家庭やひとり親世帯にとっては大きな負担となっています。

たとえば、共同通信の2024年の報道によれば、全国の保育施設の約29%が主食を保護者持参としていることが明らかになっています(※1)。これは給食のうち、ごはんやパンなどの主食のみを家庭から持参させ、主菜や副菜は園が用意するという形です。特に認可外保育施設や一部の私立認可園において、このようなケースが多く見られます。

また、布団についても「毎週末に持ち帰って洗濯」というルールを設けている園は少なくありません。夏の暑い日や雨の日でも大きな布団を抱えて移動するのは大変ですし、衛生面を考えた洗濯や干し場所の確保にも気を使います。

こうした負担が増えてきた背景には、自治体の財政難や人員不足があります。少子高齢化が進む中、医療・介護などの他分野に多くの予算が割かれ、保育サービスに十分な資金が回らなくなっている実態があるのです。昔と同じようにすべてを行政でまかなうのは難しいという事情も理解はできます。

しかし、家庭の負担が明らかに増えている現実を放置するわけにはいきません。特に共働きやひとり親世帯が増える今、保育サービスはもっと支援的であるべきです。少子化対策を掲げるのであれば、まずは足元の「子育てしやすい環境づくり」が欠かせません。

一部の自治体では、布団のリース制度や主食の提供再開など、保護者の負担を軽減する取り組みも始まっています。このような制度が全国に広がるには、現場の声をもっと反映させていく必要があります。

私たち保護者が「当たり前」として引き受けていることの中には、本来は行政サービスとして提供されてしかるべきものがあるのではないでしょうか。過去と今を比較しながら、子育ての負担の「見える化」を進め、声を上げていくことが求められています。




※1:共同通信「主食持参の保育施設が29% 保護者負担軽減を」2024年7月30日配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/0038c03df46de0ad2d7540dc469285c856f55f4a




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