「子どもだから仕方ない」と言うと、最近では開き直りだ、親の甘やかしだ、と批判されることがあります。
しかし私は、この言葉が決して悪だとは思いません。むしろ、「まだ発達の途中にある存在を、未完成なまま受け止める」ための、ごく自然な感覚なのではないでしょうか。
実際、子どもを育てていると、「正直、それは年齢的に無理でしょ」と思うようなことを、当然のように求められる場面に出くわします。公共の場で静かにする、言われた通りにすぐ動く、空気を読んで行動する…。確かに理想ではありますが、それを3歳、5歳、7歳に求めるのは酷です。
脳科学的にも、子どもは「感情をコントロールする力」や「相手の視点に立つ力」が発達の途上にあります。たとえば、感情を抑える脳の前頭前野は10歳以降にようやく機能し始め、本格的に育つのは思春期以降とも言われています(※1)。
にもかかわらず、「それができないのはしつけの責任だ」という声があまりにも多いように感じます。まるで子どもが未熟な行動をとったとき、すべてを親の怠慢と結びつけるかのような風潮です。
ですが、年齢的にできないものは、どれだけしつけてもできません。
しつけとは、「教えればすぐにできるようになる魔法」ではなく、「繰り返し伝えていく中で、子どもの中に少しずつ芽生え、育っていくもの」です。時間がかかって当たり前なのです。
子どもがすぐに大人のように振る舞えないことを、「甘やかし」「怠慢」「しつけ不足」と断じてしまうのは、大人の未熟さの表れかもしれません。
むしろ、「まだこの子は育っている途中なんだ」と理解し、できないことを責めず、少しずつ育つ姿を見守ることこそが、大人の成熟ではないでしょうか。
そして私は、こうも思います。
「子どもが子どものままでいられる社会であってほしい」と。
子どもに合わせて社会が変わるのではなく、子どもが社会に合わせて「早く大人になれ」と急かされる。そんな世の中では、子どもたちは安心して育っていけません。少なくとも、「泣いてもいい」「迷惑をかけることもある」「未熟で当然だよ」と、社会が声に出して言える雰囲気がもっと必要です。
子育てをする親も、迷惑をかけないようにと肩身を狭くしすぎる必要はない。むしろ、「今はまだできないけれど、きっとできるようになる」と信じ、安心して向き合える環境こそが大切です。
誰もが最初は子どもだった。
だからこそ、もう一度問い直してみたいのです。
「今、その子に求めていることは、本当に“できる年齢”のものですか?」
そして、「できないことを、きちんと見守れる大人でいますか?」
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※1 出典:『子どもの脳を傷つける親たち』(友田明美著/NHK出版新書)
※2 出典:『発達障害の子どもを伸ばす魔法の言葉かけ』(佐々木正美著/PHP研究所)
※3 出典:『子育てがもっと楽になる 子どもの脳の育て方』(成田奈緒子著/講談社)
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