夏休み。子どもたちにとっては楽しい季節ですが、家庭によっては深刻な課題の時期でもあります。
そのひとつが、「給食がないことで、家庭の食事負担が一気に増す」という問題です。
特に経済的に余裕のない家庭では、子どもに食べさせるために、親自身が食事を減らしているという実態も見えてきました。今回は、その現状と背景を考えてみたいと思います。
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■給食のない日々、困るのは「親」も
2024年に実施されたアンケート調査では、長期休暇中に「食事の確保が難しい」と感じる家庭が少なくないことがわかりました。
特に、ひとり親世帯や就労していても低所得な世帯では、親自身が「子どもの食事を優先するために、自分の食事を減らした」「一日一食の日もある」といった声も寄せられています。
「お米はあるけど、おかずがない」「冷凍食品を半分ずつにして何とか食いつなぐ」といったエピソードもあり、栄養面の不安も無視できません。
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■見えにくい「働く貧困」
困窮する家庭がすべて無職というわけではありません。
むしろ、「働いているけど生活が苦しい」——ワーキングプア層の親たちが苦しんでいるケースも多く見られます。
保育料、学用品費、習い事、そして夏休み中の学童保育の追加料金。
子どもが多ければ多いほど、夏休みは出費のかさむ時期です。
子どもには笑顔で夏を過ごさせたい。けれど、自分が昼を抜かないとそれができない。
そんなジレンマに直面している保護者は、決して少なくありません。
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■支援の「壁」
実は、支援制度そのものは存在します。
「就学援助制度」や「子ども食堂」「無料塾」「フードバンク」など、さまざまな取り組みがあります。
しかし、それらの制度を「知らない」「申請が難しい」「恥ずかしい」と感じて利用できていない層が一定数存在しています。
これは“制度の不備”というより、“制度の周知不足”や“心理的ハードルの高さ”の問題です。
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■批判的な声への応答:スマホや化粧を理由に支援を拒否すべき?
この問題に対して、「スマホや化粧などの“贅沢”をしているから金が無いのでは?それを税金で救えとは甘えでは?」という意見もあります。
確かに、支援を求める側の生活が一見豊かに見えると、そう感じる方もいるでしょう。ですが、その見方は社会の現実を十分に理解していないかもしれません。
1. スマホは現代の生活必需品
今やスマホは単なる娯楽の道具ではなく、仕事や子どもとの連絡、行政サービスの利用などに不可欠なインフラです。
スマホなしでは、社会から孤立してしまう恐れがあります。
2. 化粧や身なりは社会参加のために必要
特に女性にとって、身だしなみは面接や職場での印象を左右する重要な要素です。
見た目が整っていないと偏見を受けたり、就労機会を失ったりするリスクがあります。
したがって、化粧や服装にお金をかけることは、自己肯定感や社会参加のための投資とも言えます。
3. 支援を「甘え」と切り捨てることの問題
困窮している人を「甘えている」と決めつけるのは、社会の相互扶助の精神を損なうことになります。
誰にでも突然の病気や失業、家庭の事情で困窮するリスクはあります。
だからこそ、助け合える社会の仕組みが必要なのです。
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■私の視点から
これは「子どもの夏休み昼ごはん」の問題ではなく、日本の社会保障や福祉の課題を映し出す鏡です。
子どものために親が自分の食事を削るような状況は決してあってはなりません。
その背景には、非正規雇用の増加や、育児と仕事の両立の困難さ、支援制度の届きにくさがあります。
私たち一人ひとりが社会の仕組みを見直し、地域や行政で支え合うことが求められています。
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参考文献・出典
LASISA「【夏休み】 給食がない、お腹すかせる “親” …保護者へのアンケート調査で見えた《貧困の実態》」
https://news.yahoo.co.jp/articles/201927291f8b4078f5234da2786d8ae532fbd5cd
厚生労働省「子どもの貧困対策の推進に関する法律」
NPO法人キッズドア 子どもの貧困に関する活動紹介 https://kidsdoor.net/
内閣府「子供の貧困対策に関する大綱」(令和元年改定)
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【コラム】夏休み、給食がない——お腹をすかせるのは子どもだけじゃない
