【コラム】20年後にしか成果が出ない政策は、誰もやらない
〜日本が子育て支援に本気を出せない構造的理由〜

「少子化が深刻だ」「子育て支援が必要だ」と言われ続けてきた日本。しかし、実際に子育てをしていると、本当にこの国は子どもと家庭を支える気があるのかと、疑いたくなる場面が多くあります。

なぜ、日本では子育て支援がなかなか本気で進まないのでしょうか?その背景には、選挙、経済、政治の「今だけ」を優先する構造的な問題があるのです。



子どもよりも「票田」が優先される政治構造

最大の理由のひとつは、政治家が子どもや子育て世代よりも、高齢者を優先しやすいという構造です。

日本の有権者の多くは高齢者であり、かつ投票率も高いため、政治家にとっては高齢者向けの政策を重視する方が当選に直結します。一方で、子ども自身は選挙権がなく、子育て世代も多忙な毎日で政治参加が難しくなりがちです。

そのため、「未来のための政策」よりも、「現在の票になる政策」が優先されてしまうのです。



20年後にしか成果が出ない政策は、誰もやらない

子育て支援が後回しにされがちなもう一つの理由は、その成果が短期的に見えにくいという点です。たとえば、出生率の改善や将来の労働人口の増加といった効果は、数年で結果が出るものではなく、20年単位の時間がかかります。

しかし、多くの政治家にとって重要なのは、次の選挙までに目に見える成果を出すことです。任期内に成果をアピールできない子育て支援は、「やっても評価されにくい政策」として敬遠されやすいのが現実です。



経済界の意向と政治の癒着

さらに、日本の政治は経済界、とくに大企業との関係が深く、そこからの献金や支持も重要視されます。経済界が求めるのは即戦力となる労働力です。今すぐに使える人材として、移民や非正規雇用の拡大が重視されやすく、20年後の労働力となる子どもたちを支える政策は、後回しにされてしまいがちです。

短期的利益を優先する経済界と、即効性を求める政治が組み合わさることで、子育て支援という「長期投資」が軽視される構図が生まれています。



社会的にはすでに危機的、それでも変わらない

このような現状は、短期的には政治的に「合理的」かもしれません。しかし社会全体で見れば、少子化の進行は国家の基盤そのものを揺るがす深刻な問題です。高齢者を支える年金制度や医療制度も、次の世代がいなければ維持できません。

にもかかわらず、「すぐに効果が見えないから」「選挙に有利にならないから」といった理由で、将来のための政策が後回しにされているのです。



未来を守るために、私たちができること

では、どうすればこの流れを変えることができるのでしょうか。まずは、子育て世代や若年層が政治にもっと関心を持ち、声を上げることが不可欠です。投票、署名、意見表明――できることから始めなければ、何も変わりません。

「未来に成果が出る政策」に価値を置ける社会をつくるために、私たち一人ひとりが当事者であることを忘れてはならないのではないでしょうか。




参考文献

藤田結子『子育て支援はなぜ不十分なのか――日本型福祉国家の限界』(岩波ブックレット、2021)

山田昌弘『少子化社会のデザイン――人口減少時代の子育て支援政策』(新潮選書、2020)

OECD(2023)”Public spending on family benefits.”
https://data.oecd.org/socialexp/family-benefits-public-spending.htm



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