■「明確な差別であり、是正されるべき」立場から考える
2024年に報じられた、保育所大手「ニチイ学館」における「妊娠中の女性や男性保育士を採用しない」という内規。これが社会に大きな衝撃を与えました。この件を、「明確な差別」であり是正されるべきだという立場から詳しく見ていきます。
■ 法的な問題点
日本の法律において、妊娠や性別を理由に不採用とすることは、原則として許されていません。男女雇用機会均等法第5条は、「事業主は、労働者の募集及び採用について、性別に基づいて差別的取り扱いをしてはならない」と明記しています。また、妊娠・出産に起因する不利益な取り扱いは、「妊娠差別」として違法です(※1)。
採用段階で「妊娠中だから」「男性だから」と一律に排除するのは、本人の能力や適性に基づかない判断であり、法的にも認められません。たとえ「現場にすぐ入れないから」「保護者の理解が得られないから」という事情があっても、それは雇用者側が制度や説明体制で補うべき課題であり、差別の正当化にはなりません。
■ 倫理的・社会的観点
私たちの社会は、今まさに多様性を受け入れる方向に舵を切っています。保育の現場にも、さまざまな背景をもった大人がいることで、子どもは多様な価値観や接し方を学べます。
「妊婦だからすぐ働けない」「男性はトラブルになるかもしれない」という理由で一律排除することは、能力ではなく属性によって人を判断することです。これは単なる合理的判断ではなく、「最初から門前払い」する姿勢であり、人としての尊厳を傷つける行為です。
特に妊娠中の女性に対して「産休に入るから採らない」という考え方は、出産と仕事の両立を社会が支えない限り、女性のキャリアを断ち切る結果になります。
■ まとめ
差別とは、「本人に責任のない属性」で機会を奪うことです。妊娠や性別に関して、それがまさに該当します。保育の現場が苦しいのは事実ですが、それを理由に差別的な内規を設けることは、根本的な解決にならず、将来的には人材不足をより深刻化させる可能性もあります。
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【対立する視点シリーズ①】「採用差別か?合理的配慮か?」――保育所の妊婦・男性保育士への不採用問題
