【対立する視点シリーズ③】総括―差別か、配慮か。その間にあるもの

「妊娠中の女性や男性保育士を採用しない」という方針が、「差別」なのか「合理的配慮」なのか。この問いに、単純な白黒はつけにくいのが現実です。

■ 私自身の立場

私は、もちろん差別はいけないと考えます。けれど、現場に立つ人々がどんな思いで人選しているかを想像すると、そこには“仕方のなさ”がにじんで見えます。

男性保育士に関しては、体感的に女性保育士より性犯罪報道が多く、特にわいせつ行為に関する報道はインパクトが強いです。子どもが将来的に思い出し、傷つき続ける可能性もある――そう考えると、「男性であること」自体をリスクと見なしてしまう気持ちは理解できます。

妊婦さんに関しても、「せっかく採用してもすぐに現場に出られない」となると、目の前の人員を確保したい現場では、どうしても敬遠されがちです。「任せられない」のではなく、「守りたい」という気持ちから来ている場合もあるでしょう。

■ 社会が考えるべきこと

結局のところ、個々の現場や採用担当者を責めるのではなく、そうした判断を生まざるを得ないような制度の不備にこそ目を向けるべきではないでしょうか。

・保育士の人員に余裕がない ・代替職員を確保できない ・保護者と丁寧に対話できる体制がない

こうした問題が解決されないままでは、「柔軟な採用」や「多様な人材の活用」は絵に描いた餅です。安心して働ける保育の現場は、制度と社会の支えがあって初めて実現します。

■ まとめ

「差別だ」と糾弾するだけでも、「合理的判断だ」と正当化するだけでも、問題は解決しません。そのあいだにある、複雑な現実と向き合い、対話と制度改革を両輪にしていく必要があります。

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参考文献・記事

※1:厚生労働省「男女雇用機会均等法のあらまし」 https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/dl/01.pdf

※2:男性保育士による性加害事件に関する報道例(例:2023年 大阪市立保育所事件など)  報道件数の偏りはあるが、性犯罪報道では男性加害者が多い傾向が見られる。

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