【対立する視点シリーズ③】正社員でなければ産めない社会——制度の構造的欠陥と少子化の接点

①②の視点を通して浮かび上がるのは、「非正規であること自体がリスク」とされる社会構造です。非正規職員が制度上、正社員と同等の権利保障を受けられない現実が、出産・育児を希望する女性を“自己責任”の名のもとに排除しています。

2023年の総務省統計によれば、働く女性の約54%が非正規雇用です。にもかかわらず、育休取得率は正規職員が80%以上であるのに対し、非正規では20%以下に留まります(厚労省・令和5年版働く女性白書)。

こうした制度の歪みは、妊娠や出産を「キャリアの中断」と見なし、「正社員になれなかった人は仕方ない」とする社会の空気と合わさって、出産をためらわせます。

また、「夫に養ってもらえばいい」といった価値観は、選択的シングルマザーや共働き家庭の多様な形を否定する旧態依然とした前提です。現代の家族形態や生活実態と乖離した制度と職場文化が、安心して子どもを産める社会を遠ざけています。

本来、制度が支えるべきは「出産を望むすべての人」が産み育てられる社会です。非正規かどうかで線引きするのではなく、労働に参加している以上、共通の権利と尊重がなければ、公平な社会とは言えません。

妊娠のタイミングと雇用更新が重なるたびに職を失う構造こそが、少子化と女性の経済的脆弱性を助長しているのではないでしょうか。

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