【対立する視点シリーズ③】給食を豊かにするためにどうすべきか?
総括編:公平と現実のはざまで、どう設計すべきか

近年、今回の「唐揚げ1個」問題のように、給食の量や質の問題がたびたび話題になっています。物価高騰や人件費の上昇、さらには給食費据え置きなどが背景にあり、関係者の苦悩は想像に難くありません。

シリーズ①・②では、保護者負担か公費負担かという議論をしてきました。ここでは、双方の現実的な限界を見据えた上で、給食の「公平性」と「持続可能性」を両立させるにはどうすべきかを探ります。



■ 給食に「希望者追加負担」を導入すればよい?

一つの現実的な案として、「希望者が追加で負担し、主菜を増やす」という方式が挙げられます。たとえば、希望者には唐揚げを1個→2個にできるなどの“オプション制”です。

しかし、ここには大きな問題があります。
それは、子どもたちの間で「経済格差が見える形で表面化してしまう」ことです。

◯ 懸念される実例:

「あの子は唐揚げが2個、自分は1個」と気づいた子が傷つく

家で「お金ないから」と言われ、我慢を強いられる

給食の場で“貧富の差”を感じてしまう


給食はそもそも、全ての子どもに公平に食の機会を提供するための制度です。オプション制は、経済的な分断が給食の場に持ち込まれるリスクをはらんでいます。



■ではどうすればよいか? ― 3つの現実的な提案

【案1】保護者からの「任意支援」で全体を底上げ(寄付モデル)

希望者からの追加負担を個人給食の豪華化ではなく、全体の底上げに充てる方法です。

例:月に1回「プレミアム給食デー」を設け、みんなで少し豪華な献立を楽しむ

任意の寄付は家庭に任せ、給食は全員同じ内容で統一


➡ 子ども同士で差がつかないため、心理的な負担が発生しません。

東京都足立区では、所得に応じた給食費の軽減や、匿名の寄付による支援も実施されています。




【案2】「おかわり制」を活用し、“よく食べる子”をカバー

一部の自治体では、「残食を減らす」目的も兼ねて、おかわりが可能な仕組みを導入しています。

食べ盛りの子にはおかわりを許可(例:唐揚げ1個→希望者のみ+1個)

栄養士・調理師と連携し、必要量を調整


➡ 経済状況によらず、「食べたい子が食べられる」環境を整えることで、格差の可視化を避けつつ満足度を高めます。




【案3】段階的な給食費設定と匿名制

家庭の所得や希望に応じて給食費を段階的に設定しながら、給食の内容は全員統一する方式です。

所得や支払い能力に応じてA(実費)/B(軽減)/C(免除)のように設定

学校側だけが把握し、子どもたちには内容の差が出ない


➡ すでに就学援助制度などで一部運用されており、行政との連携がカギとなります。




■ 結論:給食の価値は「公平な経験」にある

給食は「単なる昼食」ではなく、“全員で同じものを食べる”という体験を通じて、子どもたちの心の健やかさを育む教育の一部です。

その意味で、「お金を出せる人だけが豪華な給食を食べる」という制度設計は、給食本来の理念に反する面があります。

私たちが目指すべきは、財源の在り方を問い直しつつ、“見えない支援”で全体を支える設計です。




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