【対立する視点シリーズ③】総括:モラハラがなければ、連れ去りも別居も起きない——暴力の本質を見誤るな

客観的視点から見ると、そもそもこうした問題は「最初から暴力(モラハラ)がなければ連れ去りも別居も発生しない」という当たり前の事実に立ち返る必要があります。

夫婦関係におけるモラル・ハラスメントはれっきとした暴力です。妊娠・出産・育児という負荷の大きい時期に、精神的・経済的な支配関係を持ち込む行為は、ただのすれ違いではありません。生活費を握られ、人格を否定され、「お前は何もしていない」「誰の金で生活してるんだ」と言われ続ける——これは人間としての尊厳を奪う深刻な人権侵害です。

それにもかかわらず、加害者が「無断で子どもを連れていかれた」と声を上げれば、逃げた側(多くは母親)が「連れ去り加害者」に仕立て上げられるような現在の議論の流れには、はっきりとした問題があります。

「話し合ってから別居すべき」という論調は、暴力があったかどうかに関係なく、加害者に“話し合いの場”という支配のチャンスを再び与えることになる。そのうえで、逃げた被害者に「連れ去り」のレッテルを貼るという構図は、まるでDV被害者を加害者に仕立てる二次加害そのものです。

共同親権が導入される現代において大切なのは、「両親の権利」ではなく、まず子どもと同時に、最も弱い立場に置かれることの多い親=多くの場合は母親の安全と尊厳をどう守るかという視点です。

話し合いが可能な関係性であるなら、協議による別居も可能です。しかし、話し合いが成立しない暴力関係の中では、逃げることこそが唯一の命綱です。それを違法だというのなら、暴力からどうやって逃げろというのでしょう?

必要なのは、暴力や支配の実態を見極める中立的な評価制度と、被害者が子どもと一緒に逃げても「違法ではない」と明確に言える社会的・法的な環境です。




■参考文献・関連資料(再掲+補足)

法務省「共同親権制度に関する民法改正の概要」(2024)

国連自由権規約委員会(CCPR)「日本への総括所見」(2022)

内閣府「配偶者からの暴力に関する統計と対策」

森まゆみ『見えないDV モラル・ハラスメントの現実』(岩波ブックレット)

上野千鶴子『おひとりさまの老後』(文春文庫) ※女性が経済的自立を阻まれる構造的背景についても





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