妊娠・出産を理由に契約更新を拒否する、いわゆる“妊娠切り”は、男女雇用機会均等法や労働契約法に違反する重大な人権侵害です。
厚生労働省の指針では、妊娠・出産・産休・育休取得を理由とする不利益取り扱いは明確に禁止されています(男女雇用機会均等法第9条3項)。加えて、非正規職員であっても、反復継続的な雇用実績があれば「実質的な更新期待」が認められ、雇止めが権利の濫用と見なされるケースもあります。
2004年の最高裁判決(東芝柳町工場事件)では、3年の契約更新実績がある契約社員の雇止めが「解雇に準じたもの」として、合理的理由を必要とするとの判断が示されました。
また2022年、札幌地方裁判所は、妊娠中の非正規保育士に対する雇止めを違法と認定。判決では「妊娠を理由とする雇止めは、労働者の人格権を侵害する不法行為」と明言されました(札幌地裁令和4年3月判決)。
そもそも、雇用契約上の不利益取り扱いは、当人が妊娠・出産したことを伝えたタイミングと雇止め通告のタイミングが近ければ、因果関係が強く疑われます。今回のAERA報道のように、「勤務できない月があるから公募で再選考」とする手法も、実質的に妊婦を排除するものです。
また、「夫に養ってもらえばいい」という発言は、女性の経済的自立と職業選択の自由を否定するものであり、職場でのジェンダー平等を著しく損なう差別発言です。
非正規であっても、妊娠・出産を理由に働く権利を奪うことは、憲法14条(法の下の平等)および27条(勤労の権利)にも抵触する恐れがあります。
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【対立する視点シリーズ②】妊娠・出産を理由とした雇止めは違法——労働者の権利と法的保護の視点から
