2025年6月、政府が打ち出した「子ども1人あたり4万円給付」の報道が話題となっています。
一見すると子育て世帯への支援に見えますが、その中身を詳しく見ていくと、どうにも釈然としない「不快感」を覚えます。
その理由は、この政策の構造そのものが、“子育て支援”を口実にした高齢者へのバラマキであり、選挙対策に過ぎないと感じられるからです。
—
■票のためのバラマキと、現役世代への静かな搾取
自民党が発表した参院選の公約に「全国民に2万円給付」「18歳以下の子どもには1人あたりさらに2万円上乗せ(=計4万円相当)」という案が含まれており、報道によればこれは石破茂首相の意向だとされています(出典:Yahoo!ニュース(時事通信)2025年6月13日付)。
この施策は一見、「子育て支援」をうたっているように見えます。しかし、その中身をよく見ると、これはあくまで選挙対策としてのバラマキ政策に過ぎず、しかも長期的には現役世代、とくに課税されている子育て世帯にとって実質的なマイナスになりかねない構図を持っています。
■ 給付されるのは「子ども一人あたり4万円」ではなく、「全国民に2万円+子どもに加算2万円」
今回の公約は、「全国民に2万円相当」「子ども1人あたり2万円の加算」という構成です。つまり、子どもが1人いればその子自身に対して2万円加算されるため、結果として「18歳以下の子どもには1人あたり4万円相当が支給される」ということになります。
しかし、「子育て世帯に1人あたり4万円給付する」というわけではなく、あくまで全国民一律2万円が基本で、そのうえで子どもに対して2万円上乗せされる仕組みです。言い換えれば、子どもがいない人も2万円を受け取るため、「子育て世帯だけが得をしている」という印象は正確ではありません。
■ それでも、子育て世帯はむしろ“損をする側”になる構図
それでもなお、「子育て世帯は得している」という誤解が広まりやすい仕組みになっています。これは、今回の政策の最大の問題点でもあります。
現代日本において、子育てを継続できている世帯の多くは、相対的に収入が高い課税世帯です。保育料の上限がすぐに頭打ちになるような所得帯で、共働きで生活している世帯が多数派でしょう。つまり、4万円支給されたとしても、将来的に社会保障や国債返済のために実施されるであろう増税により、それ以上の金額を負担することになるリスクが高いのです。
一方で、住民税非課税世帯――つまり年金生活をしている高齢者世帯など――は、この増税の負担から実質的に免れます。「ない袖は振れぬ」という言い訳が効くためです。
その結果、給付はプラス、税負担はゼロという層が生まれ、逆に子育て世帯や現役世代は一時的にカネを渡されておきながら、あとで回収されるという不公平な構造が生じます。
■ 結局「老人票」が欲しいだけでは?
実際、住民税非課税世帯の割合は日本全体で約4割とも言われており、その中には高齢者層が多く含まれます(※出典:総務省「令和4年版 国民生活基礎調査」などを基に推計)。そして、日本の有権者の中で最も投票率が高いのもまた高齢者です。
このような層に向けて給付を行い、しかも税負担が生じないように仕向ける一方で、働き盛りの現役世代、とくに子育て世帯がその負担を背負うことになる――こうした構図は明らかに選挙目当ての分配策と考えざるを得ません。
■ なぜ「子育て支援」は目くらましとして使われるのか
本来、子育て支援はもっと厚く、持続的であるべきものです。しかし今回は、それが単なる名目にすぎないという不快感があります。
子育て世帯は「4万円もらえる」という印象だけが一人歩きし、「優遇されている」「ズルい」という批判の矛先になりかねません。本当に優遇されているのは、「給付は受け取れても、増税の影響は受けない非課税世帯」であるにも関わらずです。
このように、「子育て支援」を掲げながら、実は本質的な改革もなければ公平性もない政策が打ち出されていることに、大きな不快感と怒りを覚えます。
■ 本当に必要なのは、将来を見据えた構造的支援
真に必要な子育て支援とは、次のようなものではないでしょうか。
教育費・保育料の恒久的軽減
課税世帯も実感できる支援の拡充
所得制限によらない公平な制度設計
キャリアとの両立を支える柔軟な労働制度
財源を含めた長期的視野の政策設計
その場しのぎの給付で票を釣るのではなく、子どもを安心して産み育てられる社会の基盤こそ整備されるべきです。
—
#子育て支援の嘘 #現役世代が犠牲 #高齢者偏重政治 #ばらまき政策 #選挙対策 #子ども4万円 #住民税非課税 #子育て利用するな #不公平な給付 #政治とお金