ある日突然、見知らぬ人が「今日からあなたのお父さん(お母さん)です」と家にやってきたら——。
それが大人なら、「勝手に入ってこないで!」と追い返すでしょう。
でも、子どもだったら?
出て行く自由も、反対する権利もないまま、拒否権のない同居生活が始まるのです。
親の離婚や再婚は、子どもの生活に大きな変化をもたらします。とくに再婚は、家の中という最もプライベートな空間に、見ず知らずの他人が「家族」として入ってくる重大な出来事です。
それなのに、日本では再婚にあたって子どもの同意は必要とされません。
法律上、再婚自体は親の自由。養子縁組をしない限り、法的な「親子」にはなりませんが、現実には再婚相手が親のように振る舞い、子どもにとっては逆らえない存在として機能してしまいます。
親に逆らえば「わがまま」、受け入れれば「我慢」——選択肢のない状態に追い込まれているのです。
また、再婚家庭における虐待や性被害のリスクも、厚労省や児童相談所のデータからは無視できないことが明らかになっています。
「赤の他人」と暮らすことは、ただでさえストレスの大きいこと。そこに支配的な言動や暴力が加われば、子どもの心身に大きな傷を残す可能性があります。
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■海外ではどうしているのか?
たとえばスウェーデンやノルウェーなどの北欧諸国では、親の再婚に伴って子どもの意思確認が求められる場合があります。
とくに同居や親権変更が生じる場合、福祉当局が介入し、子どもが安心して暮らせる環境かどうかを第三者がチェックします。
ドイツでは、14歳以上の子どもが養子縁組を拒否できる明確な権利を持ち、さらに家族関係に大きな影響がある場合、家裁の判断が必要とされる場合もあります。
また、イギリスではソーシャルワーカーが家庭の安全確認を行い、必要に応じて親の再婚を一時停止させる制度もあります。
つまり、「親の自由」と「子どもの安心」が衝突する場面では、子どもの人権が優先される構造があるのです。
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■日本でも変わるべき時では?
日本でも「子どもの権利条約」は批准されていますが、実際の法制度や慣習では、まだまだ子どもの声は無視されがちです。
「親が決めたことだから」「生活のためだから」と言われれば、それ以上は言えなくなってしまう子どもも少なくありません。
ですが、本来家庭は、子どもにとって最も安心できる場所であるべきです。
新しい大人が入ってくるなら、事前に説明をし、子どもの気持ちを丁寧に聞く。不安があれば、専門機関に相談する。
それだけでも、子どもが「自分には価値がある」と感じることができるかもしれません。
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■まとめ
親の再婚は、大人の人生の選択のひとつです。
しかしその選択に、人生の土台を揺るがされるのは子どもたちです。
彼らがただ「我慢する」しかない社会であっていいのでしょうか。
「子どもの声を聞く」というのは、単なる優しさではなく、人権の基本です。
日本でも、親の再婚に際して、子どもの同意や意見表明を制度として組み込むことが求められているのではないでしょうか。
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参考文献
厚生労働省「児童虐待に関する統計」
子どもの権利条約(日本ユニセフ協会)
OECD報告書「家庭の多様性と子どもの福祉」
ドイツ民法§1745(養子縁組の同意に関する規定)
スウェーデン社会庁「家庭再構成における子どもの福祉基準」
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【コラム】親の再婚は本当に“自由”でいいの?
――ある日突然「知らない人」と同居、追い出すことも出ていくこともできない未成年の現実
