【コラム】共働きを推奨するなら、フルタイム労働は6時間に短縮すべきでは?

近年、「共働き」が社会全体で推奨されています。
政府も「男女共同参画」や「女性活躍推進」といった政策を掲げ、保育環境の整備や育児支援の充実を図っています。

しかし、私たちが直面している現実には、大きな矛盾があります。

それは、「共働きを求めながら、フルタイム労働の拘束時間があまりにも長すぎる」という点です。



■フルタイムの「8時間労働」は、もともと誰のために設計されたのか?

私たちが当たり前のように受け入れている「1日8時間労働」は、20世紀初頭の産業社会において確立された基準です。
この基準は、通勤時間も家事も育児も担わない“男性労働者”を前提に作られたものでした。

つまり、「会社と自宅の往復だけで済む」「家庭のことは妻が担う」といった前時代的な生活モデルが当然とされていた時代の設計図なのです。

現代のように、共働き世帯が増え、通勤時間が長く、保育園の送迎や家事を夫婦で分担する社会において、1日8時間+通勤時間の働き方はすでに時代遅れになっているのではないでしょうか。


■子育てと共働きの両立には、拘束時間の短縮が必須

日本では、1日8時間労働+1時間休憩=実質9時間拘束がフルタイム勤務の標準とされています。
通勤時間を含めると、10時間以上家庭を空けることになり、特に子育て世帯にとっては極めて大きな負担です。

保育園の送り迎え、病気の対応、宿題のチェックや食事の準備。
これらをすべて「仕事の後」にこなすには、あまりにも時間が足りません。

共働きが現実的に難しくなれば、結果として

・片方(特に母親)がキャリアを諦める

・子どもを持つこと自体を断念する

といった事態につながり、少子化の大きな一因となります。




■「時短勤務」では根本解決にならない

現在も「時短勤務制度」は存在しますが、それはあくまで「8時間が基準」であることが前提です。
育児などの理由で6時間に短縮すれば、その分だけ給料が減るという構造です。

この仕組みでは、長時間働ける人ほど経済的に優遇され、子育てや介護と両立する人が「損」をすることになります。
これでは、多くの人が共働き・子育てをためらうのも当然です。



■そもそも、フルタイムは「6時間」にすべきです

そこで私は提案します。
「短時間勤務を選べる」のではなく、フルタイムそのものを6時間(週30時間)に見直すべきではないでしょうか。

8時間労働の前提が「家事育児フリーの男性モデル」である以上、現代の共働き・子育て世帯にとって公平な制度とは言えません。

全員が無理なく働き、家族の時間を確保できる社会を目指すなら、「6時間フルタイム」への転換は避けて通れないはずです。



■給料を下げずに労働時間を減らす方法はある

「働く時間を減らしたら給料も減るのでは?」と心配する声もありますが、給料を維持したまま労働時間を短縮することは、実現可能です。

その鍵となるのが、以下のような取り組みです:

業務の棚卸し・無駄の削減(例:不要な会議や報告書の廃止)

「やらないことリスト」の導入(本当に必要な業務に集中)

窓口や営業時間の見直し(デジタル化・予約制で効率化)

経営層の報酬・内部留保の再配分(労働者への利益還元)


さらに、「時間」ではなく「成果」で評価する仕組みにシフトすることで、より柔軟な働き方が実現します。



■海外ではすでに成果が出ている

実際に、アイスランドでは週4日勤務制(1日6〜7時間程度)を導入したところ、労働生産性は下がらず、ワークライフバランスが改善しました(Haraldsson & Kellam, 2021)。

オランダでは、パートタイムでもフルタイムとほぼ同等の待遇が保障され、家庭と仕事の両立が可能です(OECD, 2022)。
フランスでは、企業利益の一部を従業員に還元する制度があり、労働者の報酬が不当に削られることがありません。

こうした制度は、日本でも参考になるはずです。




■「育児と共働きを前提とした社会設計」こそが未来をつくる

「仕事は8時間が当たり前」という価値観は、すでに時代にそぐわないものとなりつつあります。
家庭・地域・健康を犠牲にしてまで働き続ける社会では、次世代を育てることが難しくなってしまいます。

フルタイム労働の定義を「週40時間」から「週30時間」へ。
これは、共働きと子育ての両立を“当たり前”にするために必要な社会基盤だと考えます。




【参考文献】

Haraldsson, G. & Kellam, J. (2021). Going Public: Iceland’s Journey to a Shorter Working Week. Autonomy & Alda.

OECD (2022). Family Database – PF2.1: Key characteristics of parental leave systems.

厚生労働省(2024)「働き方改革の現状と課題」

経済産業省(2023)「人的資本経営に関する調査報告書」

Federici, S. (2004). Caliban and the Witch(「家父長制と資本主義」より家事労働のジェンダー視点)



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