「今の若い子は体罰をされていないから人の痛みがわからない。だから人間関係がこじれるとすぐに殺人にまで発展する」
——そんな言説を、見聞きしたことはありませんか?
一見もっともらしく聞こえるこの主張。しかし、現代の子育ての実情や、最新の発達科学に照らしてみると、その内容には大きな誤解と偏見が含まれています。
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■ 体罰が脳に与える影響
近年の脳科学・心理学の研究では、体罰が子どもの脳の萎縮や神経発達への悪影響をもたらすことが報告されています。特に前頭前野の発達が阻害され、自発的な判断や創造性が低下するリスクがあることが指摘されています。
その結果、子どもは「怒られないことを最優先」に行動し、自信や意欲が育ちにくくなる傾向があるのです。
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■ 昭和の時代との違い
昭和の頃は、「誰かの言うことを聞いていれば安泰」という社会構造がありました。正社員としての終身雇用が前提で、上司や教師の指示に従う従順さがむしろ“美徳”として評価されていた背景があります。
しかし現在はどうでしょうか?
「成果主義」が普及し、個人の主体性や創造力、積極的なチャレンジ精神が求められ、性別や年功による自動的な安定は保証されていません。こうした社会においては、「怒られないことを優先する人」よりも、「自ら考え動く人」が強く求められています。つまり、「誰かの言う事を聞いていても、それが安泰や評価に繋がらない」社会構造になっているのです。
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■体罰をしない子育ては“努力”の積み重ね
現代の親たちは、体罰に頼らず、子どもの心を壊さないように育てる方法を日々模索しています。それは言うまでもなく、「令和の社会で求められる力を身に着けさせると同時に、他者と暴力ではなく対話で関わる力を身に着けさせるため」です。
「言うことを聞かせる」のではなく、「子どもがなぜその行動をするのか」を理解し、根気よく向き合う。ときには第三者の目を気にしながら、葛藤のなかで子どもを導く。これは、決して「甘やかし」などではなく、むしろ並々ならぬ努力の連続です。
確かに、放任や過干渉など、別の問題も現代には存在します。しかしそれでも、体罰という「手っ取り早い解決策」に安易に頼らず、他の方法で育てようとする姿勢は尊重されるべきではないでしょうか。
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■おわりに:変わりゆく社会、変わる子育て
時代が変われば、子どもに必要な力も変わります。
かつて有効だった手法が、今の時代にそのまま通用するとは限りません。
「昔はこうだった」という感覚だけで、今の若い世代や親たちを否定するのではなく、現代の課題に応じた育て方を模索する姿勢にこそ、目を向けていきたいものです。
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