「保育園に落ちたの? 給付金狙いで延長したいんでしょ?」
そんな言葉が、いま育児と向き合う多くの親を傷つけています。
しかし本当に責められるべきは、親たちではなく「制度の不備」ではないでしょうか。
—
■ 1歳で復帰しなければならない空気感
日本の育児休業給付金制度では、育児休業開始から180日までは賃金の67%、181日目からは50%と支給額が減ります。そして原則、給付金の支給は「子どもが1歳になるまで」です。
保育園に入れないなどの理由があれば1歳半・2歳まで延長できますが、認可保育園の「落選通知」が必要なうえ、「給付金延長狙い」と見られかねないプレッシャーがつきまといます。
こうした制度設計により、多くの親が「1歳で仕事復帰せざるを得ない」状況に追い込まれているのが実情です。
—
■ 3歳くらいまで育児したいのは、わがまま?
ここで問いたいのは、「じゃあ、3歳くらいまで子どもと過ごしたい」という希望は、果たして“わがまま”なのでしょうか?ということです。
もちろん生活のために働かなければならない人も多いです。だが一方で、産後数か月で始まる夜泣き、離乳食、後追い、トイレトレーニング──。もっと時間をかけて育てたい、親子で過ごす時間を大事にしたいと思うのは、自然な感情ではないでしょうか。
そして何より、多くの親はそれ以前に何年も納税し、働き、社会を支えてきた存在です。
将来また仕事に復帰し、長く税を納めていく前提があるのに、「今の給付金は1歳まで、あとは自力で何とかして」という制度でいいのでしょうか。
—
■ 子どもはいつ生まれるかわからない、でも保育園は「4月」中心
1月や2月に生まれた子は、翌年4月の入園まで1歳3か月程度あります。そこまで育休を取ろうとすると、ちょうど給付金が減額・終了するタイミングと重なります。
保育園は4月入園が中心で、途中入園は競争率が高く、枠が極端に少ないです。「4月に生まれていれば…」と不公平を感じる親も多いです。
結果、「保育園に落ちた=給付金延長狙い」と誤解されますが、実態は時期や運によって左右される保活の過酷さと、制度の不備にあります。
—
■ 新制度「出生後休業支援給付金」は改善の兆しか?
2025年4月から、父母ともに育休を取得し一定の条件を満たすと、最大28日間、賃金の80%(実質手取り10割)を支給する「出生後休業支援給付金」が始まっています。
しかし対象は非常に限定的で、育児全体を支える仕組みとは到底言い難いです。
わずか1か月弱の“支援”では、安心して子育てできる環境にはなりません。
—
■ わたしたちが求めているのは、ズルでも特権でもない
多くの親は、ただ「子どもと一緒に過ごせる時間」を求めています。
それが「給付金延長狙い」と捉えられたり、「早く社会復帰しろ」という空気にさらされるのは、あまりにも酷です。
必要なのはこうした制度改革ではないでしょうか:
育休給付金の支給期間を3歳まで延長し、選択制にする
支給額を手取りベースで100%に近づける設計にする
保育園の定員を増やし、通年で安定して入園できる仕組みにする
育児の選択肢を、働くこと一択にしない制度にする
—
■ 「育てたい」という思いが報われる社会に
「育てたいから給付金が必要」
「働きたいから保育園が必要」
どちらも正当で、どちらも支えられるべき希望です。
いま必要なのは、親の選択を狭める制度ではなく、多様な生き方を保障する社会設計です。
誰もが安心して子育てできる社会に向けて、まずはこの「声にならない違和感」から目を背けないことが大切だと思います。
—
#育児休業給付金 #育休延長 #保育園落ちた #育児制度改革 #育児と仕事の両立 #出生後休業支援給付金 #共働き支援 #制度の矛盾 #わがままじゃない #日本の子育て #少子化対策 #育休制度の限界 #育児にもっと手厚く
【コラム】「育休給付金狙い」と言う前に──制度が追い詰めている現実とは
