【対立する視点シリーズ③】
神谷代表「高齢女性は子どもを産めない」発言をどう考えるか
(3)総括とこれからの視点

◆「言いたいこと」と「伝わったこと」は同じではない

神谷代表の「高齢の女性は子どもを産めない」という発言は、おそらく“若いうちに出産できる社会に変えよう”という主張を前提としたものだったと考えられます。
妊娠出産には適齢期があるという事実を無視することは、少子化対策としても現実的ではありません。

しかし、どれほど正論でも、伝え方を間違えると、メッセージそのものが拒絶されてしまうという典型例でもありました。

とくに公示第一声という注目の場であったからこそ、言葉の重みが問われたのです。




◆問題は“女性の年齢”ではなく“社会のあり方”

今の日本では、「産みたくても産めない」事情を抱える女性が多くいます。

・キャリアとの両立が難しい

・雇用が不安定で経済的な不安が大きい

・周囲のサポート体制が不足している

・妊娠出産のタイミングで“戦力外”扱いされる職場文化


これらの問題は、決して個人の“決断”や“努力”だけでは解決できません。
出産は社会の問題であり、構造の問題です。

「適齢期のうちに産むべき」と言うなら、まず「適齢期に産んでも安心できる社会に変える」ことが先です。




◆なぜ男性側の視点が語られなかったのか?

妊娠出産は女性だけでできるものではありません。
パートナーの存在、職場の理解、そして社会的支援があって初めて成り立ちます。

それなのに神谷代表の発言は、女性にだけ焦点を当て、男性の役割や責任について一切言及していませんでした。

本来、こういった発信には以下のような視点も必要だったはずです。

・男性が若いうちから子育てを人生設計に組み込むこと

・男性の育休取得を当たり前にする制度の充実

・「父親になる」ことを男性も社会的責任として受け止める文化


社会が変わるためには、女性に産めという前に、男性も変わる必要があるのです。




◆私見:冷静な事実と、温かい配慮の両立を

私は、妊娠出産に適齢期があるという事実を直視しない風潮には、ある種の危機感を持っています。
その一方で、その事実を使って「だから女性が早く産め」と迫るような言い方には反対です。

出産に関する決断は、とても個人的で、重く、デリケートなものです。
誰もが他人の目や制度の冷たさに怯えずに決められるように、“社会の側が寄り添う姿勢”が必要だと私は思います。




◆おわりに:本当に必要なのは「産みたいときに産める社会」

少子化対策として、「もっと早く産め」というメッセージが繰り返されがちですが、
本当に必要なのは、

✅ 産みたいときに
✅ 誰にも遠慮せずに
✅ 安心して産める社会


そのためには、女性だけでなく男性も、企業も、政治も変わる必要があります。

神谷代表の発言は、たしかに耳を引きました。
ですが、議論を「誰が悪いか」ではなく「どう変えるか」に向けるべきときが、今ではないでしょうか。




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◆参考文献

厚生労働省「仕事と育児の両立支援の現状」

日本産科婦人科学会「年齢と妊娠の関係」

内閣府『男女共同参画白書2024年版』

国立社会保障・人口問題研究所『出生動向基本調査』

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