【対立する視点シリーズ③】
「行政の小学校朝食支援は是か非か」──親と社会の責任の間で、子どもを中心に据える支援を考える

「親の責任」と「社会の責任」というテーマは、子育て支援政策のあらゆる場面で衝突し続けてきた視点です。学校での朝食提供をめぐる議論も、この古くて新しい論点を改めて突きつけています。

親が担うべき役割はもちろん重要です。愛情、栄養、生活習慣、道徳──家庭が果たす教育的・育成的役割を軽視することはできません。しかし、すべての家庭が十分にそれを提供できるとは限らない現実もまた、無視することはできません。

政策の目線が「親の努力」にばかり注がれると、家庭という環境に恵まれなかった子どもたちの支援が後手に回ります。逆に「社会がすべて支えるべき」という視点だけが突出すると、親が育児から手を引いてしまう温床にもなりかねません。

そこで必要なのは、「親を責めるか守るか」という二項対立を超えて、常に「子どもを中心に据える」視点です。子どもが健康に、安心して育つために何が必要なのか。それを提供するために、誰がどのような役割を果たすのが最適なのか。行政と家庭、学校と地域、それぞれが役割を補完し合う協調体制が不可欠です。

このバランスを見極めながら、子ども一人ひとりの命と育ちを支えていく。それが成熟した社会のあり方ではないでしょうか。支援を「甘え」と見るか「必要な投資」と見るか。その問いに対して、まずは子どもの笑顔を見つめるところから始めたいと願っています。

参考文献:

山田昌弘『子育て支援と自己責任論』勁草書房(2015)

OECD(2022)“Starting Strong V: Transitions from Early Childhood Education to Primary Education”


#子ども中心主義 #親と社会の役割分担 #支援と自助 #教育政策のバランス

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