【コラム】「休日が休日でなくなる」子育てと少子化の本当の課題

 最近の報道では、既婚男女で「2人目の子どもが欲しい」と答える割合が過去最低を更新したことが話題になっています。政府は「異次元の少子化対策」を掲げ、出産や教育費の支援を強化していますが、それでも子育て世帯の現実は変わらず厳しいままです。

なぜなら、教育費や金銭面だけが少子化の原因ではないからです。

 私自身が強く感じるのは、「休日が休日でなくなる」ことこそ、二人目・三人目に踏み出しにくい最大の理由だということです。




■子育ては趣味や自己実現とは決定的に違う

 子育ては素晴らしい体験であり、かけがえのない喜びを与えてくれます。子どもと過ごす時間は、親にとって最高の思い出となることも多いでしょう。しかし同時に、子育ては「趣味」や「自己実現」とは決定的に異なる側面を持っています。

 その違いは、「やる・やらない」を自分で選べないことです。

 例えば、体調が悪い日は「推しのライブに行くのをやめて休もう」と判断できます。趣味ならば自由に選択が可能です。けれども子育てには、「今日は体調が悪いからやめておこう」という選択肢は存在しません。

 私自身、熱を出して吐いている最中にも、同じく吐いてしまった子どもの洗濯物を片付けた経験があります。どれほど体調が悪くても、親は子どもの世話を止めることができません。この「休めない」という特性こそが、親を大きく追い詰めるのです。




■次世代が子育てをためらう理由

 この「休息がない」という現実を、子どもを育てていない人は想像しにくいかもしれません。ですが、親としてはまさに日常の核心です。そして何より大きいのは、その姿を子ども自身が間近で見て育つという点です。

 「子育てってこんなに大変なんだ」「お母さんやお父さんは休む暇もないんだ」と感じた次世代は、自然と子育てに尻込みするようになります。これは単なる一家庭の問題ではなく、社会全体に波及する課題です。




■必要なのは「親に休息を保障する社会」

 今、国はさまざまな少子化対策を打ち出しています。2024年度からは「子ども誰でも預かり制度」が始まり、保育園に通っていない子どもでも一時的に預けられる仕組みが整いつつあります。けれども現場では、需要に対して枠が不足していることや、十分な人材確保が難しいといった課題も浮き彫りになっています。

 結局のところ、金銭的な支援だけでは限界があります。親に「休息」を保障できる制度や文化を社会に根付かせることこそが、本当の意味での少子化対策になるはずです。子どもの一時預かりや地域コミュニティでの子育てシェアといった取り組みを拡充し、親が「今日はちょっと休みたい」と思える余地を社会が認めること。それが、長い目で見ればすべての人にとっての安心につながります。

 独身の方も含め、これは社会全体の課題です。子育て世帯が孤立しない仕組みを整えなければ、回り回って社会全体が困ることになります。




参考文献

厚生労働省「子ども・子育て支援新制度について」

内閣府「異次元の少子化対策」関連資料

朝日新聞デジタル「子ども誰でも預かり制度スタート、利用希望殺到」





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