【コラム】子育て世代に「だけ」配慮しない「二重基準」の問題

電車やバスなどの公共空間で、健康そうに見える若者が優先席に座っていても、「具合が悪いかもしれない」と思って配慮する声が聞かれます。しかし同じ空間で、泣く子どもを連れた親に対してはどうでしょうか。「泣き止ませろ」「静かにしろ」と強く求める一方で、子育て世代の状況を配慮する声はほとんど聞かれません。このように、子育て世代に対して「だけ」配慮の対象外にしている態度が存在するのです。

■公共空間での「配慮」とは

公共空間で求められる配慮とは、相手の状況や立場を想像し、互いに心地よく過ごすための行動です。健康な大人に対して配慮する心理は理解できます。では、なぜ子育て世代には同じ配慮が及ばないのでしょうか。

一因として、心理学的には「投影」や「フラストレーションの転嫁」が考えられます。自分自身のストレスや不満、生活の不便を子どもや親に投影し、「泣き声=自分の不快」と認識してしまうのです。これにより、表面的には「マナー指摘」や「迷惑だから静かにさせろ」という要求になりますが、背景には個人的なフラストレーションや心理的負担が関係しています。

■社会的・構造的背景

さらに社会学的な視点から見ると、現代社会では子育て世代を取り巻く環境が非常に厳しいことが影響しています。共働き世帯の増加、保育施設の不足、地域コミュニティの希薄化などにより、親が公共空間で子どもを連れて移動する負担は過去よりも増しています。その一方で、社会的認知や支援が十分でない場合、子育て世代は「配慮されない対象」とみなされやすくなります。

■二重基準は差別になり得る

健康そうな大人には配慮するが、子育て世代には配慮しない──この「二重基準」は、無意識の差別として捉えることもできます。公共空間で求められるのは、性別や年齢、役割に関わらず、互いの状況を想像して尊重することです。子育て世代にだけ配慮を欠く態度は、平等な社会の原則に反しているといえるでしょう。

■まとめ

公共空間での配慮は、すべての人に対して平等に行われるべきです。

子育て世代にだけ配慮が及ばない「二重基準」は、心理的・社会的背景によって引き起こされることがあります。

この現象を理解することで、単なる性格批判ではなく、社会的構造や心理的要因の問題として議論できます。

子育て世代に限らず、公共空間での互いの状況を想像する「お互い様」の精神こそ、共生社会の基盤となります。





参考文献

総務省統計局. (2020). 「人口推計」. https://www.stat.go.jp/data/jinsui/

山田昌弘. (2004). 『パラサイト社会のゆくえ データで読み解く日本の家族』. 筑摩書房.

日本トランスパーソナル心理学/精神医学会誌. (2011). 「子どものスピリチュアリティ研究における最近の動向」. https://www.jstage.jst.go.jp/article/transpersonal/11/1/11_7/_pdf






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