【コラム】公園の子どもの声に過敏になる背景──「不本意未婚・不本意子なし」と心理の関係

近所の公園で子どもたちが遊ぶ声に、つい過敏に反応してしまう大人がいます。特に具合が悪く、静かな環境を求めているとき、その賑やかな声が苛立ちや不快感として襲ってくることもあります。こうした反応は、単に神経質だから起きるのではなく、社会構造や個人の心理的背景と深く関係しています。

■子どもをめぐる社会の変化

ここ数十年で、日本では晩婚化や未婚率の上昇、出生率の低下が進み、いわゆる「不本意未婚・不本意子なし」の人々が増えています(総務省統計局 2020)。かつては「大人になったら子どもを持ち育てる」というライフサイクルが社会的に当然とされてきました。しかし、現代では経済的不安や働き方の多様化により、このライフサイクルから外れてしまう人が出てきています。

こうした背景がある人にとって、子どもは単なる「成長する人間」ではなく、「恋愛や経済で成功した人の持ち物」のように映ることがあります。その存在を目にするたびに、自分の経験できなかったことや置かれた立場の不利益を思い知らされ、心理的な負担となるのです。

■過敏な反応の心理的メカニズム

心理学的には、この現象は「投影」や「コントロール欲求」として説明されます。自分が抱える劣等感やフラストレーションを、子どもやその遊び声に投影し、無意識のうちに「子どもを制御することで自分の感情を処理しようとする」行動につながります。表面的には「神経質」「子どもに厳しい」と見えますが、根本には社会的・心理的な不満が存在しているのです。

■公園という公共空間での「お互い様」

一方で、公園は子どもが自由に遊ぶことを前提とした公共空間です。子どもたちが声を出して遊ぶのは自然な行動であり、その存在を制限することは公平とは言えません。具合が悪い大人も、公園の子どもたちの声はある程度受け入れ、自衛策(耳栓や少し離れた場所で休むなど)を取ることが、現実的でお互いに配慮した行動になります。

このように、子どもへの過敏な反応を「性格の問題」と切り捨てるのではなく、社会構造や心理的背景の影響として理解することが重要です。お互いが立場や状況を理解し合う「お互い様」の精神こそ、共生する社会を支える基盤となります。




参考文献

総務省統計局. (2020). 「人口推計」. https://www.stat.go.jp/data/jinsui/

山田昌弘. (2004). 『パラサイト社会のゆくえ データで読み解く日本の家族』. 筑摩書房.

日本トランスパーソナル心理学/精神医学会誌. (2011). 「子どものスピリチュアリティ研究における最近の動向」. https://www.jstage.jst.go.jp/article/transpersonal/11/1/11_7/_pdf





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