【コラム】新幹線は「無法地帯」? 指定席の不正占拠と文化の壁 〜制度見直しは必要か〜

● はじめに:急増するトラブルと日本の制度の限界

近年、訪日外国人観光客の急増により、日本の公共交通機関、とくに新幹線の車内マナーをめぐるトラブルが深刻化しています。

2024年以降、各鉄道会社や国土交通省のデータ、現場の報告によれば、
主に以下のような事例が多数報告されています:

・指定席の無断占拠(座席の間違いではなく意図的)

・規定を超えた特大荷物の持ち込みと置き場の占拠

・車内でのゴミの放置や、においの強い飲食

・多人数での大声会話や通話

これらはすべて「マナー違反」や「ルールの無理解」として捉えられますが、
本質的な問題は、日本の公共交通システムが「性善説」に基づき構築されていることにあります。

新幹線は、そもそも「乗客はきちんとルールを守る」ことを前提としており、
自由席・指定席の明確な区別がなくても運営が成り立っていました。
ところが、グローバル化が進み、文化も言語も異なる人々が一斉に利用するようになったことで、
この「性善説モデル」が制度としての限界を迎えつつあります。

特に、乗客同士でのトラブルが起きた際、言語が通じず、職員もすぐに駆けつけられないという構造上の弱点が、
「善良な一般利用者が損をする」状況を生み出しています。




● 問題提起:このまま我慢を強いる構造でよいのか?

言葉が通じない相手に注意しても、伝わらない。

車掌がすぐ来なければ、自分の席を奪われたまま立ち続けるしかない。

車掌が来ても、マナー違反者が席を動かなかったらどうするのか――。


こうした疑問を感じたことがある方も多いのではないでしょうか。

次章からは、こうした問題を具体的に掘り下げ、
現在の制度で足りていない点、改善すべき点、そして現実的な解決策について整理していきます。




● 1.相手の言語がわからないと対応できない

新幹線の指定席に座ろうとしたところ、自分の席にすでに誰かが座っていた。
その相手が外国人で、言葉が通じない場合、注意したくても伝わらず、戸惑ってしまうことがあります。

多くの国では「自由席が基本」「空いていれば座ってよい」という鉄道文化もあり、
日本のように「指定席に座る」というルールが十分に伝わっていないケースも少なくありません。

このような言語の壁があることで、マナー違反を目の前にしても、
一般利用者が正しく注意したり、行動を起こすことが困難になるという現実があります。




● 2.車掌がすぐに来ないと、立ち続けるしかない

困ったときに頼れるはずの車掌が、その場にいないこともあります。
新幹線は10両以上の長い編成が多く、乗務員は数名で全車両をカバーしており、
すぐに呼んでも来られない場合があります。

その間、自分の指定席に知らない人が座り続け、
本来の乗客が通路に立ったままになるという理不尽な状況が発生するのです。




● 3.車掌が注意しても動かなかったら?

さらに深刻なのは、車掌が注意しても相手が従わなかった場合です。
日本の鉄道職員は、原則として乗客に対して「強制的に席を移動させる」ことができません。
これはトラブルの拡大を防ぐためという理由もありますが、
結果的にマナー違反を放置するしかないという矛盾を生み出しています。




● ではどうすればよいか?

✅ 1. 多言語対応の強化

「この席は予約されています。移動をお願いします」などの定型文をカード化し、
英語・中国語・韓国語などで車内常備することが効果的です。

✅ 2. 即時通報システムの整備

車内に設置された緊急連絡ボタンで乗務員を即呼び出せる仕組みを整えることが重要です。

✅ 3. 不正乗車への罰則導入

航空機と同様に、無断占拠に対する罰金など、一定の抑止力を設けるべきです。

✅ 4. 自動チェックゲートの導入

将来的には、改札や車内にスマートゲートを導入し、指定席に正しい乗客だけが入れる仕組みも検討の余地があります。




● 結びに

「日本人は我慢しすぎる」とよく言われます。
その我慢が正義感を持つ人たちに負担を強いているのが、今の新幹線の実情です。
外国人観光客が悪いのではなく、制度設計がその多様性に追いついていないという問題に向き合うべき時期にきています。




【参考文献】

Merkmal「新幹線は『無法地帯』なのか? 多国籍トラブル急増の現実、不正占拠・特大荷物と性善説の壁」
 https://news.yahoo.co.jp/articles/2f8dccca2b151c5470342c492bb3364f3e86f997






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