【構造から考えるシリーズ】若者が定着しない田舎――レッテルから逃れられない構造

「なぜ若者、特に女性は田舎に定着しないのか?」という問いは、単に便利さや就職先の有無だけでは語り尽くせません。根底には、個人の努力や能力よりも、属性(若い・女性・よそ者など)によって人を評価・制限するという、田舎特有の社会構造が横たわっています。

都会の社会(ゲゼルシャフト的社会)では、良くも悪くも成果や役割が評価の基準になります。仕事で成果を出せば認められるし、何かに失敗しても「自分の選択の結果」として受け入れやすい。性別や出身地に関係なく、一定のルールの下で振る舞える自由があるため、自分らしく生きる道が開けています。

一方、田舎(ゲマインシャフト的社会)では、個人が「何者であるか」より「どこから来たか」「女か男か」「年上か年下か」といったカテゴリーの方が重視されがちです。若い女性は、地元出身であっても「嫁」という立場に押し込められ、地域のしきたりや暗黙のルールに従うことが求められます。そこでどれだけ努力を重ねても、「若いくせに」「女のくせに」と言われることで、意見が通らなかったり、振る舞い方に制限を受けたりします。

つまり、田舎では「自分の責任で自由に振る舞う」ことが極めて難しいのです。剥がすことのできないレッテルを背負ったまま、常にその立場からの行動を求められる。この窮屈さこそが、若者が、特に女性が「このままでは自分らしく生きられない」と感じて外へ出ていく大きな理由です。

もちろん、田舎にも魅力はあります。自然、ゆとり、地域とのつながり、子育て環境など。ただしそれは「人間関係の窮屈さを上回る魅力である場合」に限られます。現在の構造では、多くの若者にとってそれは成立していません。

本質的な変化には、今まで「強い側」とされてきた地元の年長男性や地域権力層が、自らその構造の見直しに取り組む必要があります。変わることにメリットを感じづらい側が変わらない限り、地域はゆるやかに、しかし確実に衰退していくでしょう。

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