世界中で移民排斥の動きが加速しています。なぜでしょうか?
それは、「多文化共生」の理想が、現実の制度運用や社会の体力と釣り合わなくなってきたからではないでしょうか。
ドイツ、スウェーデン、フランス、イタリアなど、かつて移民受け入れに積極的だった国々が、近年次々と方針を転換し、“移民の制限”あるいは“移民の排除”に舵を切っています。背景には、治安悪化、社会保障の負担増、価値観の衝突、政治的分断など、深刻な社会問題の多発があります。
受け入れた当初は「労働力確保」や「国際貢献」といった名目でしたが、いったん定住が進み、移民二世・三世が増えれば、「もう戻れない」構造が生まれます。さらに、摩擦が深刻化しても、制度的に“引き返す”手段がないことが多く、政府は苦しい対応を迫られます。
日本も今、同じ道を進もうとしているのかもしれません。少子高齢化により「移民なしでは社会がもたない」と語られることが増えましたが、そもそも“もたない社会”を前提とした制度設計の見直しこそ、先に議論されるべきではないでしょうか。
移民を受け入れるということは、単に「人を入れる」だけではなく、社会の制度・文化・教育・福祉といったあらゆる分野の“再設計”を意味します。
それが困難だと理解しているからこそ、各国は「最初から入れない」ことを選んでいるのです。
■ 参考:
『移民政策の逆流』ハンス・マッティセン(2022)
スウェーデン政府白書「移民と福祉の限界」(2018)
BBC「ヨーロッパ各国の移民政策転換」(2023)
#移民政策の限界 #制度疲労 #世界的潮流
【コラム】【移民と共存のリアル⑤】
なぜ今、多くの国が「移民を入れない」方向へ進んでいるのか?
