はじめに:対立した2つの視点から見えてきたもの
前回までの2本のコラムでは、次のような対立する視点を紹介してきました。
【第1回】評価は労働時間か成果か?
【第2回】チャイルドペナルティは自己責任か社会構造の問題か?
いずれも一方的に片づけることができない問題であり、それぞれの立場にそれぞれの「正しさ」が存在しました。しかし同時に見えてきたのは、「親になること」が経済的にも精神的にも大きなリスクを伴う社会の構造です。
—
■「子どもを産まないほうが得」な社会の行き着く先
今や多くの若者が「子どもを持つこと」に不安やリスクを感じています。
出産後、収入が大きく減る。キャリアが止まる。周囲の理解や支援が乏しい。
こうした現実を前に、子どもを持つ選択を見送る人が増えているのは、単なる「個人の志向」だけで片づけられる問題ではありません。
少子化が進めば、将来の労働力や税収、社会保障の支え手が減っていきます。
つまり「親にならないほうが得」という現状は、社会全体の土台を揺るがす深刻な問題なのです。
—
■“自由な選択”が成立しない構造の中で
前回触れたように、子育て中の親たちは以下のような二重三重の困難にさらされています。
・上がる物価と社会保険料、重くなる税負担
・教育費や保育料など将来に備える支出
・人手不足による労働の過重化と精神的疲弊
・子育てと仕事の両立困難、母親への責任集中
もはや「親になったのは自分の選択」という一言では済まされないほど、制度的・経済的な重圧が個人にのしかかっています。
—
■中立的に見ても必要な“構造の見直し”
少子化は「自己責任」では止まりません。社会全体の維持、経済の持続性、そして未来の安定に直結するからこそ、構造的な手当てが必要です。以下はその一例です。
◇ 子育て世帯の手取りを増やす政策
児童手当の恒久的・大幅な拡充
教育費・保育費の完全無償化
所得税や社会保険料の減免(子ども数に応じた調整)
◇ 収入が減らない柔軟な働き方
時短勤務でも賃金カットなし
保育の時間と仕事時間のマッチング支援
育児時間も「社会への貢献」と見なす評価制度
◇ 子育ての「社会化」
地域ぐるみの一時保育・学童・見守り支援
「親だけが担う」のではなく、社会インフラとしての育児支援整備
—
■誰もが「親になれる社会」へ
今の日本は「子どもが欲しい」と思った人が、心身を壊すことなく、経済的にも追い詰められずに、親になれる社会ではありません。
それが結果として少子化を加速させ、未来の活力を奪っています。
親になることが損にならず、「次世代を育てることが尊重される社会」。
それは特定の誰かを優遇するという話ではなく、社会全体の再生産を可能にする最低限の仕組みです。
働き方、税制、制度、価値観――多方面での見直しが必要です。
それを可能にする政治的意思と市民の声こそが、これからのカギになります。
—
#チャイルドペナルティ #少子化対策 #育児支援 #働き方改革 #家庭支援政策 #手取りアップ #評価制度改革 #子どもを育てやすい社会 #子育てインフラ #選べる人生設計
【対立する視点シリーズ③】
『子どもを産まないほうが得』な社会に未来はあるか
― チャイルドペナルティを超えて、誰もが親になれる社会へ ―
