チャイルドペナルティは「自己責任」なのか?
子どもを産んだことでキャリアに大きな影響が出るのは、母親ばかり。この現象に対して、「仕方ない」「自分で選んだのでは」という声がある一方で、「なぜ母親だけが?」という問いも強く存在します。
今回は、チャイルドペナルティを「母親の選択」と見る視点と、「社会構造の問題」と見る視点の対立を整理します。
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【立場A】キャリアとの両立は“選択”であり、自己責任もある
◇ 家族の中で誰が育児を担うかは話し合いで決めること
「夫が育児に協力的ではない」「職場が理解してくれない」と言っても、育児や働き方の選択は最終的に家族の中で決めること。
「パートナーと十分に話し合わずに育児と仕事の両立を決めたのでは?」という見方もあります。
◇ 不利を承知で選んだのなら、それは選択と責任がセット
「時短勤務にすると評価が下がる」と分かっていて選んだなら、その影響も含めて覚悟しておくべきだという意見も。
また「会社や社会のせい」にばかりしていると、主体性のない人材と見なされ、余計にキャリアを失う結果にもなりかねません。
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【立場B】負担が母親に偏っているのが問題
◇ 妊娠・出産は代替できない役割
生物学的に妊娠・出産は母親にしかできません。ここからすでに「仕事を続けにくくなる」土壌が生まれます。
さらに、日本では「育児=母親の役目」とされる風潮が強く、保育園の送り迎えや子どもの体調不良時の対応も、自然と母親側が担う傾向があります。
「夫も育児に協力している」と言っても、実際の時間比率や責任の偏りを見れば、依然として女性の方が大きな負担を背負っているケースが多数です。
◇ 社会制度の設計が“男働き・女育て”に偏っている
たとえば育休取得率。女性は8割超なのに対し、男性はわずか17%(厚生労働省「雇用均等基本調査 2023」)。
企業側も「男性が育休?代わりがいないよ」「昇進に響く」などとする空気が残っており、結局、母親ばかりがキャリアを止める選択を強いられています。
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■「自由な選択」の前に、選択肢の整備が必要
自己責任論と構造的問題論、どちらにも一理あります。ただし忘れてはならないのは、「自由な選択」が成り立つためには、十分な選択肢と情報が必要だということです。
現実には、育児を担う親(母親・父親問わず)が自由に選べる状況にはありません。
物価高や税負担の増大、保育料や教育費の負担、さらには人手不足による1人あたりの業務量の増加などが、働く親たちの心身を圧迫しています。仕事と育児を両立するにはあまりに負荷が重く、「自分で選んだ」と言えるような土台すら整っていないのが現実です。
だからこそ、子育てをしている人の収入が減らないような働き方や、むしろ手取りが増えるような政策設計が求められています。
それは「子育て世帯のため」だけではありません。誰もが安心して家庭を築けることは、社会全体の持続可能性にとっても必要な土台だからです。
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【対立する視点シリーズ②】
「“選んだのは自分”なのか?母親の選択と社会の構造」
