近年、子ども向けの医療脱毛の受け入れ年齢が8歳まで引き下げられるなど、低年齢化が進んでいます。SNSの影響や自己処理による肌トラブル防止、見た目に関するコンプレックス解消を目的に、親子で脱毛を選択するケースが増加中です。
しかし、医療脱毛を受ける子どもたちの成長過程における健康リスクや倫理的問題、そして社会的影響については賛否両論あります。特に、子どもの自己決定権と親の価値観の関係、心理的な安全と身体的な安全のバランスは非常に繊細です。
ここではまず、脱毛に反対の立場から、問題点やリスクを整理していきます。
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① 脱毛に反対の立場
1. 医療リスクと身体への影響
子どもの皮膚は成人より薄く、皮膚バリア機能や免疫機能も未成熟です。レーザー脱毛は熱エネルギーを利用するため、
・火傷や炎症
・色素沈着や皮膚のダメージ
・成長に伴う毛の再生パターンの変化
などのリスクが高くなります(参考:日本皮膚科学会ガイドライン)。安全性が完全に保障されているとは言えません。
また、成長期はホルモンバランスが変化し、脱毛効果が安定しにくいため、継続的に繰り返し施術を受ける必要があり、結果的に身体的・精神的な負担も増えます。
2. 自己決定権の問題と倫理的懸念
8歳や10歳の子どもが、将来的な美容目的の脱毛を自らの意思で十分に理解し、判断できるかは疑問です。
親が望むからといって脱毛を強要することは、子どもの意思を尊重しない介入になりかねず、身体の自主性や尊厳を侵害する恐れがあります。
また、「見た目の美しさ」が過剰に強調されることにより、子どもの価値観が早期に固定され、「外見至上主義」的な社会の価値観を内面化するリスクも指摘されています。
3. 社会的・心理的影響の長期的懸念
脱毛が子どもの「いじめ対策」や「社会的立場の確保」として位置づけられる場合、
・脱毛できない子どもが排除されるヒエラルキーが助長される
・子どもが「外見でしか評価されない」というプレッシャーを強める
という負の連鎖を生む可能性があります。
心の健康を守るための「対症療法」として脱毛を選ぶ前に、子ども同士の多様性を認める教育や、いじめ対策そのものの見直しが必要ではないでしょうか。
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参考文献・資料
日本皮膚科学会「医療レーザー脱毛に関するガイドライン」
https://www.dermatol.or.jp/qa/medical_laser.html
産業医科大学「小児の皮膚と医療脱毛」論文(2023年)
NHK「子どもの美容医療・医療脱毛の是非」特集(2025年)
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【対立する視点シリーズ①】子どもの医療脱毛問題:問題提起と脱毛に反対の立場
