■働く母にとっての「減点制度」
子どもを持つことが、働く上で“減点”として扱われる現実をご存じでしょうか?
東京大学の研究によると、女性は出産を機に賃金が約46%も減少するという驚くべきデータが明らかになりました(参考:小杉礼子・中村尚史ほか「労働市場におけるチャイルドペナルティの実態」、東京大学社会科学研究所)。
この大きな賃金格差を生む背景には、「労働時間こそが評価の基準である」という、古くからの評価制度があります。ここでは、この制度をめぐる2つの立場をご紹介し、働く母親の現状について考えてみます。
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【立場A】労働時間もまた「貢献」の証
◇ 長時間労働が支える現場のリアル
労働時間も無視できない「貢献の指標」だという声は根強くあります。
現場の多くは、営業時間中の急なトラブル対応や、突発的な業務に対応できる「在席力」に依存しています。こうした職場では、時間的な制約がある人よりも、長く働ける人のほうが頼りにされやすいのです。
「業務はチームで進めるもの。自分のタスクだけ終わらせて『成果を出した』と言われても、全体が回らなければ意味がない」――これも現場でよく聞かれる意見です。
◇ 成果主義には見えない仕事が評価されにくいという課題も
成果だけを評価軸にすると、目に見える数字だけに注目が集まり、地道な調整や周囲のサポート、後輩指導などが評価されにくくなるという懸念もあります。こうした“裏方業務”は、確かに数値化しにくいものの、組織全体の質を高めるうえで欠かせません。
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【立場B】評価は「成果」で行うべき
◇ 時間ではなく実績で人を評価してほしい
短時間勤務であっても、限られた時間内に高い成果を出している人が多くいます。とくに子育て中の母親は「時間を無駄にできない」状況で働いており、効率的な仕事の進め方を体得しています。
「労働時間でしか評価されないなら、どれだけ成果を出しても意味がない」――こうした声は多くのワーキングマザーから聞こえてきます。
さらに、リモートワークやフレックスタイム制度など柔軟な働き方が広がる現代では、労働時間に依存した評価基準は時代遅れであるという指摘もあります。
◇ 成果主義の導入は企業の人材確保にも有利
少子化が進む中で、子育て世代を排除するような企業は人材不足に陥るリスクも高まっています。成果主義を導入すれば、優秀な人材を離職させずに済み、企業にとってもプラスに働きます。
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両立が難しいからこそ「多様な評価軸」が必要
成果を重視すべきという声と、労働時間も大切だという声。どちらの立場にも現場のリアルがあります。
しかし、子育て中の人が「働いているだけで評価が下がる」「昇進から外される」という状態は、やはり見直すべきでしょう。必要なのは「どちらか一方」ではなく、状況に応じた柔軟な評価軸です。
人事制度や働き方改革の目的は、「誰もが持てる力を発揮できる環境」を整えることにあります。
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【対立する視点シリーズ①】
「“働く母”は甘えなのか?成果主義か労働時間か」
