【コラム】スキマバイトで埋めていいのか?──「命を預かる現場」としての保育

保育士不足が深刻化する中、「スキマバイト」で人手を補う動きが広がっています。スキマバイトアプリに登録した保育士が、必要なときに必要な時間だけ働く――一見、柔軟で効率的な仕組みに見えるかもしれません。

しかし、それが「保育」という現場で本当に適切なのか。私は、根本的に立ち止まって考えるべきだと思います。

■保育は「大人だけで完結する仕事」とは違う

飲食店や倉庫作業などのスキマバイトであれば、マニュアルや仕組みである程度の業務を回すことが可能です。しかし保育はそうではありません。
子どもの命を預かり、愛着関係を築き、健やかな育ちを支える仕事です。

コロコロ変わる大人に囲まれて、不安定な環境の中で育つ子どもたちの心に、どんな影響があるでしょうか。
現場では、「この人はどんな人か」「子どもとどう関わるのか」分からないまま、突然現れる“新しい大人”に戸惑う子も少なくありません。
一方でスキマ保育士側も、その保育園の方針や子どもの個性が分からないまま業務に入ることになり、トラブルやすれ違いのリスクが高まります。

■「人数を揃えればいい」という発想の危うさ

子どもの命を預かる現場で、人手が足りないから、とにかく数を揃えようという考え方はとても危険です。

確かに、最低限の人員が確保されなければ園の運営自体が難しくなるのは理解できます。でも、スキマバイトで「見かけ上の人手」が満たされることで、本質的な問題が置き去りにされるリスクがあります。

それはつまり、「人が来ないからスキマバイトで埋めて終わり」となってしまい、なぜ保育士が定着しないのか、なぜ辞めてしまうのかという構造的な問題に目を向けることがないままになるということです。

■本当にやるべきことは、「自然に人が集まる職場づくり」

本当に必要なのは、スキマバイトで穴埋めをすることではなく、保育士が安心して長く働ける職場環境を整えることです。

・低すぎる賃金

・長時間労働と持ち帰り業務

・保護者対応や行事負担の過重さ

・専門性に見合わない待遇の軽視

これらに向き合い、労働環境や処遇を抜本的に見直すことこそが、保育士不足を根本から解決する道だと思います。

「子どもの命を守る」「愛着を育む」保育という仕事の尊さにふさわしい社会的評価を与えることで、自然と人が集まる職業へと変えていくこと。
それが、未来の子どもたちにとっても最善のはずです。




参考文献・情報源

読売新聞「重宝されるスキマバイト保育士、『問題ある人が紛れても排除しようがない』と不安の声も」(2025年7月)

厚生労働省「保育士確保対策」

日本保育協会「保育の質と職員配置に関する提言」





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