2025年6月19日、兵庫県西宮市の認定こども園で、蒸しパンを食べた園児がアナフィラキシー症状を起こし、病院に搬送されました。
報道によると、症状が出た園児は1人で、命に別状はなかったとのことです。こども園は当日、保護者向けの説明会を開き、対応の見直しや原因の調査を進めているとしています。
【参考】読売テレビ・Yahooニュース(記事は後日リンク切れの可能性があるため要約)
兵庫・西宮市のこども園で、給食の蒸しパンを食べた園児がアナフィラキシー症状を起こし搬送された。園は謝罪し、保護者説明会を開いた。蒸しパンに何のアレルゲンが含まれていたかは調査中とされている。
このニュースを受けて、SNSなどでは「アレルギーがある子どもは、毎日弁当を持参すれば園も子どもも助かる」という意見も出ていました。一見もっともに聞こえるこの意見ですが、本当にそれで良いのでしょうか。
■弁当持参がすべてを解決するわけではない
確かに、アレルゲンを完全に排除するには、親が用意した弁当の方が安心かもしれません。誤配膳や調理ミスなどのリスクを避けるという意味でも、「自己管理」による安全確保はひとつの手段です。
しかし、毎日弁当を用意することの負担は計り知れません。特にアレルゲンが多い場合は、除去や代替食の調理が非常に難しく、調理時間もかかります。共働き家庭や、下の子の育児がある家庭では物理的に不可能なこともあります。
さらに、子どもが周囲の友達と違うものを食べていることで、孤独感や疎外感を抱くケースもあります。食事は「栄養をとる」だけでなく、「人とつながる」ための大事な時間でもあります。その時間に一人だけ違うものを食べているという経験が、子どもにとって辛く感じられることもあります。
■アレルギー対応は「親の責任」だけで済ませてはいけない
弁当持参を「親の自己責任」とする風潮は、アレルギー児の親を孤立させます。そして、給食対応をしない園が増えると、アレルギーのある子どもは入園先すら限られてしまうことになります。
アレルギーがあっても、できるだけ皆と同じ環境で過ごせるように。
そのために園側ができる配慮は何か、行政に求められる支援は何かを、社会全体で考える必要があります。
たとえば――
・除去食や代替食の提供体制を整える(できる範囲で)
・食物アレルギーの子どもにも対応できる栄養士・調理員の配置
・保護者と園の連携を丁寧に行う
・希望する家庭には弁当持参を選択肢として用意する
・国や自治体が人員配置や給食費補助などの支援制度を整える
このような体制があれば、「毎日弁当を持たせないと安心できない」社会ではなく、「皆で安全に食を楽しめる」社会に近づくのではないでしょうか。
子どもたちの命を守ることは最優先です。しかしその命を支える大人たち――親や保育者――の生活や健康も同じように大切にされなければ、持続可能な支援体制は築けません。
■子どもも親も園も、みんなが助かる方法を探したい
「弁当持参にすればいい」という簡単な一言が、どれだけの負担と孤独を生むのか。
実際に子どもを育てている人ほど、その重みを理解しているのではないかと思います。
子どもたちが安心して育ち、親も無理なく子育てできる環境――
それを目指すために、アレルギーのある子どもたちに対しては「配慮」と「選択肢」の両方を用意することが必要です。
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【参考文献・資料】
日本小児アレルギー学会「学校生活における食物アレルギー対応ガイドライン」
厚生労働省「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン」
西宮市こども園アレルギー事故報道(読売テレビ・2025年6月19日)
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【ニュース/コラム】アレルギーのある子どもに「弁当持参を求める」ことの重さ
