【コラム】「お母さん同士は盛り上がるのに、お父さん同士は素通り?」その理由を考える

公園やスーパー、子ども関連のイベントなどで、たまたま知り合いの「お母さん同士」が出会うと、「あら〜!こんにちは!」と明るく会話が始まることがよくあります。けれども、同じようなシーンで「お父さん同士」が出会っても、軽く会釈するだけでそのまま終わってしまうことも珍しくありません。
この違いには、どのような背景があるのでしょうか?




1. 育児における接点の多さの違い

母親同士は、保育園や小学校の送り迎え、連絡帳やLINEグループ、地域の行事などで、自然と顔を合わせる機会が多くなります。また、子どもを通じて情報交換する文化も根付いているため、会話のきっかけが生まれやすいのです。

一方で父親同士は、仕事の都合などでそうした日常的な関わりが少ない傾向にあります。たとえ子どもが同じクラスだったとしても、顔と名前が一致しないことすらあります。そのため、「あ、たぶんあの子のお父さんだけど…声かけるほどではないか」と、会話に至らないことが多いのです。




2. 社会的役割への無意識な刷り込み

日本社会には、「育児は主に母親が担うもの」という固定観念がいまだに強く残っています。母親同士が仲良くしている様子は「自然なこと」として受け入れられるのに対して、父親同士が立ち話をしていると、「珍しい」「何話してるんだろう?」と見られがちな風潮もあります。

また、男性は一般的に「他人とあまり馴れ馴れしくしない」「目的のない会話はしない」といった傾向があり、親しさを表に出すことがためらわれるケースも少なくありません。




3. 話題の切り出し方が難しい

母親同士の会話は、育児・家事・学校行事・今日の天気など、日常の延長で始めやすい話題がたくさんあります。「〇〇ちゃん、もう鉄棒できるの?」「この前の参観日大変だったよね〜」といった形で自然に話が広がります。

対して父親同士は、「子どもの話題にどこまで踏み込んでいいかわからない」「急に話しかけて警戒されないか心配」と感じることもあり、無言で終わってしまうことがあります。




4. 「偶然の再会」に慣れていない

母親は、育児を通じて地域で人と出会う機会が多く、ばったり誰かに会うことに慣れている人が多いです。それに比べて父親は、休日しか子どもと出かけない人も多く、「知っている人と偶然会う」こと自体があまりない場合もあります。そのため、予想外の再会にどう反応すべきか戸惑ってしまうのかもしれません。




少しのきっかけで、距離は縮まるかもしれない

では、父親同士も自然に関係を築くにはどうすればよいのでしょうか?

「〇〇くん、最近よく公園に来てますね」といった軽い話題から入ってみる

「この前、うちの奥さんが話してたんですけど…」と家族を介した共通点を持ち出す

保育園や地域で父親参加型のイベントがあれば参加してみる


ほんの一言でも会話を交わせば、「話しかけてもいい相手なんだ」という安心感が生まれ、次に会ったときの空気もきっと変わるはずです。




参考文献

落合恵美子(2006)『育児する父親の時代』NHK出版新書

杉浦由美子(2013)『ママ友がこわい』幻冬舎新書

厚生労働省「令和4年 国民生活基礎調査」より、育児参加に関する統計データ

田中俊之(2015)『男が働かない、いいじゃないか!』講談社現代新書





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