【対立する視点シリーズ①】「もっと働ける社会」は自由か負担か?残業規制緩和が生む“選択の幅”

残業規制の緩和をめぐって、賛否が激しく分かれています。
特に参院選の争点としても浮上し、「もっと働ける社会を」という主張が一部から強く発信されています。
一見するとこの主張には、現代社会にふさわしい“柔軟な働き方”の可能性が感じられるかもしれません。

では、「もっと働ける社会」とはどのような社会で、どんなメリットがありうるのでしょうか?
今回は「残業規制緩和に賛成する立場」から、その論点を丁寧に掘り下げてみたいと思います。




■ 働きたい人に「選択肢」を

残業規制を緩和すべきだとする意見の多くは、「もっと働きたい人がいる」という現場の声に着目しています。

・スキルアップや副収入のために働きたい

・子育てが終わり、フルタイムで稼ぎたい

・起業準備や留学費用を貯めるために、一定期間だけ集中的に働きたい

このような「自発的に働きたい」という人々にとっては、画一的な残業上限が逆に不自由に映るのです。

「働かせる」のではなく、「働きたい人が働ける」こと。
それは、自己決定権の尊重であり、多様な人生を支える制度として位置づけられるべきだという考え方です。




■ 高度スキル・専門職への柔軟対応

特に高度専門職や裁量労働制を活用している業種(エンジニア、コンサル、デザイン業など)では、
「自分で働く時間と量をコントロールしたい」というニーズが強くあります。

画一的な時間管理ではかえって生産性を損なう場面もあり、
残業時間を一律で抑えるよりも、**「成果主義」「自己裁量」**が重視される傾向にあるのです。

残業規制の緩和は、こうした「柔軟な働き方」を志向する人たちへのサポートとも言えるでしょう。




■ 人手不足と企業側の現実

また、少子高齢化・人材不足が進む中で、企業側にも現実的な課題があります。
「一人ひとりの生産性を上げる努力」だけでは、納期や運営を回せないという場面も少なくありません。

特に中小企業では、人員リソースの余裕がない中で、短時間労働の強制が事業運営に深刻な影響を与える場合があります。

もちろん、企業の利益のために労働者を酷使していいわけではありません。
しかし、「働きたくても働けない制度」のままで本当に良いのか?という問いは、一定の重みを持っています。




■ 「自由」は自己責任とセットで

賛成派の立場では、残業規制の緩和は「自由な選択肢の一つ」であるべきという前提に立っています。
それは裏返せば、「過剰な残業を強いられる人が出ない制度設計」とセットで考えなければなりません。

・選択した残業は、きちんと手当が支払われること

・残業を拒否する権利もきちんと保障されること

・働きすぎによる健康被害が出ないよう、チェック機能を強化すること


こうした前提が整備されれば、残業規制の緩和は「働き方の自由化」として機能する可能性もあるのです。




■ 結びにかえて

「もっと働ける社会」をめぐる議論は、単に“働かせるかどうか”ではなく、
「人それぞれの生き方を、どう制度で支えるか」という本質的なテーマでもあります。

次回は、反対の立場から「なぜそれが危険なのか」「何が見過ごされているのか」を考えていきます。




📚 参考文献

厚生労働省「働き方改革に関する総合的研究」

経済産業省「未来の教室ビジョンレポート(働き方編)」

Yahooニュース「『働かせたい改革』に企業抗議 残業規制緩和巡り」(2025年7月)





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