【コラム】「同格婚」のしんどさ 〜譲り合えない夫婦関係のリアル〜

共働きが当たり前になった今、同じような学歴、同じような職場、同じような年齢の男女が結婚する「同格婚」が増えています。お互い対等な立場でパートナーを選び、家事も育児も収入もシェアしながら、理想的に見えるこの関係。でも実は、この「同格」であるがゆえに、どうしてもぶつかってしまう壁があります。




■「どっちが正しいか」の終わらない戦い

同格婚では、どちらかが「一歩引く」「相手に譲る」というのが難しくなります。なぜなら、どちらも自分の意見に確信を持っていて、それを相手に説明する力(ロジックや言葉の力)も持っているから。

だから些細なことでも「自分の主張の方が正しい」「あなたのやり方は非効率」と論争になりやすいのです。夫婦間のやり取りが、気づけば裁判のように「証拠と主張の応酬」になることも少なくありません。




■「譲る」が「負け」になる構造

たとえばどちらかが「今回は私が譲るよ」と歩み寄っても、それが「自分が間違っていた」と認めたように受け取られるリスクがあります。

同じ土俵で対等に立っているからこそ、「譲ったら負け」「弱みを見せたら舐められる」と無意識に感じてしまう。これは男女関係に限らず、職場などの同格関係でも起こりうることですが、家庭という密接な空間ではとくに根深くなります。




■気持ちを伝えることがリスクになる

「もっと丁寧にしてほしい」「こうされると悲しい」といった本音を伝えるだけでも、「相手より先に弱みを見せた」ように見えてしまう構造があります。

さらにやっかいなのが、伝えた側が「気持ちを伝えたのに理解してもらえなかった」と傷つき、受け取った側は「責められた」と感じて防衛的になるという、“伝えることそのものがリスク”になるループです。

その結果、どちらかが先に話せば「また責められた」、我慢して黙れば「どうせ聞いてくれない」。そんな悪循環に陥ってしまいます。




■同格婚に必要なのは、勝ち負けを手放す視点

では、どうすればこの出口のない対立から抜け出せるのでしょうか。

お互いの気持ちを伝え合う――それができれば理想ですが、「気持ちを伝えることが“譲る”ことや“負け”と受け取られてしまう構造」がある限り、現実には簡単ではありません。

だからこそ必要なのは、「気持ちを伝える前に、その言葉が“攻撃”に聞こえないように整えるクッション」です。

たとえば、何かを伝えるときに:

「こうしてくれると助かる」

「私の方はこう感じていた」

「これはあなたを責めたいわけじゃなくて、状況を一緒に整理したい」


といった“意図の見える言葉”を添えることで、防衛反応を少しだけ和らげることができます。

同格婚の中では、「気持ちを伝える技術」が必要なのです。
正しさではなく、理解の橋をかけるための言葉選び――そこに突破口があるのかもしれません。




参考文献・データ

『夫婦という他人』野田美香(新潮社)

内閣府男女共同参画局「男女の仕事と家事育児の分担に関する意識調査」(2023)


#共働き #夫婦関係 #同格婚 #家庭内コミュニケーション #家事育児の分担 #感情の伝え方

タイトルとURLをコピーしました